高野秀行さんの本はここでは何度か取り上げています(基本、取り上げた順ですが、「アヘン王国潜入記」は私にとって別格なので最初に)。
アヘン王国潜入記
https://kmaebashi.com/blog/kmaebashiblog/post/52
酒を主食とする人々
https://kmaebashi.com/blog/kmaebashiblog/post/48
イスラム飲酒紀行
https://kmaebashi.com/blog/kmaebashiblog/post/49
辺境メシ ヤバそうだから食べてみた
https://kmaebashi.com/blog/kmaebashiblog/post/77
今回紹介するのは、高野さんの若いころの自伝というか、「自伝的小説」です※1。
まずは「ワセダ三畳青春記」。
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高野さんが、22歳から33歳にかけての11年間、風呂なしトイレキッチン共同の木造アパート「野々村荘」で過ごした頃の話です。アパートと言っても今普通に想像するような集合住宅ではなく、昔ながらの玄関共同の下宿屋らしい(私が学生の頃はそういうのもまだあったなー)。11年中、8年は三畳間、最後の3年は四畳半に住んでいたとのこと。
そんな安い下宿(三畳間の家賃12000円)だし、タイトルには青春記とあるし、若い人ばかり出てくるのかなと思ったら、野々村荘には40代司法試験浪人中の「ケンゾウさん」とかやはり40代の「ケガワ君」とか50代とおぼしき「守銭奴」とかも住んでいる。この年齢は本書開始時点なので、終盤ではみんなさらに10年くらい年を取っているわけですが、ケンゾウさんは50歳を目前に、ケガワ君は50代になってからそれぞれ野々村荘を出ています。ケンゾウさんは司法試験の夢破れてだし、ケガワ君は終盤2年はずっと無職でついにお姉さんに引き取られたということだし、私は、今でも「貧乏だがヒマが有り余る気楽な暮らし」にあこがれるところはあるものの、正直、こうはなりたくない。ケンゾウさんは「中年なのに若い子(特に女性)にやたらからみたがる迷惑なおっさん」だし。
で、当の高野さんは、この安いアパートで「男おいどん」とか「大東京ビンボー生活マニュアル」的な、金はなくても気楽な生活をしていたのかといえば、この期間中にミャンマーの「ワ州」に行ってアヘン作りを経験して「アヘン王国潜入記」を書いている。気楽な生活なようで、ずっと部屋でゴロゴロしていたわけではないんだよなあ。
ところで横道ですが、本書に出てきた平井和正さんの話。「ムー」の編集部に、幻魔大戦に出てくる「幻魔」をよく見るという人が現れたので、ムーの編集者が(幻魔大戦作者の)平井和正さんに紹介したら、
そしたら、二人で幻魔の話で盛り上がってね。『ぼくが見たのはこれこれこういう奴です』『あー、そりゃオレも会ったことあるよ。ありゃ、下っ端だな』とかいって。ぼくも驚いたんだけど、平井さんって本人は小説を書いてるつもりはないんだよ。全部、事実を書いてるんだってさ。で、結局、その変な男は平井さんと仲良くなって、今、平井さんのアシスタントをやってるみたいだ
さすがである(平井和正さんが)。
次。「アジア新聞屋台村」
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「ワセダ三畳青春記」の後半くらいの時期に、高野さんが働いていた「エイジアン」という外国人向け新聞社の話。
『タンクトップにショートパンツ、スニーカーに茶髪のロングヘア、ピンクの口紅という、遊びに来ているとしか思えないようなねえちゃん』であるところの台湾人の劉さんが社長で、台湾はもちろん日本に住んでいるタイとかミャンマーとかインドネシアとかマレーシアの人向けの新聞(というかミニコミ紙)を出している会社。高野さんはここでタイ向け新聞に日本語コラムを依頼されたところから始まって、すぐに編集顧問として働くようになります。
いろいろ事件は起きますが、それは読んでいただくとして。
エイジアンは不動産業務もやってます。
アジア系外国人にアパートを紹介するという仕事だ。四ページほどの韓国人向け不動産情報誌も作っている。 その名も「家を探して三万里」。 ふつう、営業的には「うちに来ればすぐ物件がみつかりますよ」とアピールしなければならないはずで、こんな自虐的なネーミングでは客足が遠のきそうな気がする。だが、現実には「いや、ほんと、そうだよね」と韓国人の共感を誘うとのことで、彼らがいかに日本で住まい探しに苦労しているかが偲ばれる。日本人の排外的な体質をもいやおうなく知らされる。
外国人が部屋を借りるのが大変だという話はよく聞きますよね。
ところで、社長の劉さんは台湾人で『タンクトップにショートパンツ、スニーカーに茶髪のロングヘア、ピンクの口紅という、遊びに来ているとしか思えないようなねえちゃん』なのだとすれば、表紙の女性は誰?
- ※1『なお、「野々村荘」というアパート名および本書に登場する人物は一部をのぞき全て仮名であり、それでも関係者諸氏に迷惑がかかるおそれがあるので、あくまで私の自伝的「小説」としてお読みいただけたら幸いである。』とか書いてあるので、どこまで実話でどこからフィクションなのかは読者側で勝手に想像すればよいでしょう。
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