例によって高野秀行さんの本です。
今回は、どっか秘境に探検に行った、という本ではなく、タイトルの通り、腰痛に関する本です。
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本書にも出てきますが、高野さんのモットーは「誰も行かないところに行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く。以上」だったはずですが、今回はえらく身近な話題です。私だってひとごとではない。
40歳の冬、東京から沖縄まで2ヶ月かけて自転車で2500kmの旅をして、その後ブラインドサッカーの練習に出てみたら腰に激痛が走った。そこから高野さんの病院遍歴が始まります。なお、ここで紹介された病院については、
治療院・病院は基本的に仮名とし、所在地は実際のものと変えた。各治療院の療法も名称を変えた。
とのこと。ただ、治療法については「名称を変えた」だけで実際にやった内容は変わってない、とことなんでしょう。たぶん。
- 近所の整形外科クリニック。「医学的な異常は見当たらない」と言われた。
- 目黒治療院。「股関節からくる腰痛ですね」と言われて「ごく軽く動かすだけ」の施術20分ほどで1回6000円。
- 砦整骨院。近所の整骨院。「インナーマッスル療法」1回600円。
- カリスマ治療師。「ガンの人だって体の左半分が変化するから見ればわかりますよ」とか「ガンの原因が化学調味料」とか言ってる。初診3万円で1ヶ月間何回行ってもいいらしい。.
- 立川の成型専門クリニック。「典型的な椎間板ヘルニア」「先天性臼蓋形成不全」と言われる。さらにMRIを撮ったら「脊柱管狭窄症」があったと言われる。
- 脊柱管狭窄症手術の名医。話だけ聞いて、手術はしていない。「狭窄症の症状は出ていません。椎間板ヘルニアでもありません」と言われる。
- PNF研究所。「故障個所に痛みを与えないように周辺の筋肉を鍛える」療法。
- ミナミ動物病院の鍼の先生。動物病院の院長が「月水金の午前中、人間向けに鍼治療をやっている」とのこと。
- 超能力者の秋山眞人さん。テレビ番組でたまたま会って、その場でなんかやってもらったそうだ。
- 厚木の中医学の「名医」。ミナミ動物病院の先生の師匠の一番弟子格の人で、「磁気鍼」を使う。
- 中野の「ブラックジャック」。「前に取材したことのある内科医の先生に「腰痛なら整形外科の名医がいる」と紹介された」とのこと。「椎間板ヘルニア」も「脊柱管狭窄症」も「臼蓋形成不全」も「ない」と言われる。
- 江戸川区の心療内科のクリニック(心因性を疑って)。紙の心理テストを100問以上やらされて、ろくに話も聞かずに心因性と断定されて抗うつ剤をどっさり出す。
最後の心療内科でもらった薬を、しばらくはおとなしく飲んでいたものの、昼夜逆転して仕事もできなくなったので高野さんはついにぶちぎれて薬を全部ゴミ箱に突っ込んで水泳に出かけて、それで治ったわけではないが2か月ぐらいでピークを越えて、その後だんだん治った、ということのようです。
しかしまあ、読んでみて思うのは、「世の中にはインチキな民間療法がたくさんあるんだなあ」ということと、「標準医療も腰痛のような病気にはあまり役に立たないのかもな」ということ。
上に挙げた病院の中で、2の目黒治療院とか4のカリスマ治療師とか、完璧な詐欺でしょう(仮に本人にその意識がなかったとしても)。鍼灸だってプラセボ以上の効果はないことが確認されている。9の超能力者は論外だ。
1, 3, 5, 6, 11, 12あたりは標準医療の範疇でしょうが、いうことがみんな食い違ってる。12の心療内科については(本書を信じるなら)診療以前の問題で医者の態度が悪すぎる。
標準医療がこの調子なら、代替医療に走る人が出るというのも理解はできます。だからって、そこに付け込んで金をむしり取る連中がいるというのは許しがたいことですが。
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