K.Maebashi's blog

最近の読書「カッコウはコンピュータに卵を産む」


まだちょっと前のですが読書記録です。

古い本です。「カッコウはコンピュータに卵を産む」。
1986年頃、バークレーの研究所にハッカーが侵入したのを追い詰めていく話(実話)です。

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私が最初の会社に入社して新人研修で初めてUNIXを使ったのが1992年頃、それよりちょっと前の話になりますが、新人研修に回されるようなコンピュータなんて当時からして旧式の奴だったのでしょう、ファイル名が最大14文字で、2バイトのi-node番号と合わせて16バイトだったので、ディレクトリをod -cでダンプするときれいに中身が見えた記憶。

ハッカーの正体が誰だったか、それはネタバレなので最後に書きますが、当時のUNIXを触ってた身からするといろいろ楽しい。私が最初に触ったUNIXはSystem V系で、次に触ったのがBSD系のSun OS 4.1.3だったので、psのオプションが-auxではなく-efだったことでハッカーがバークレーの人間のないことに気付く、というあたり、あるある感があります。

『プログラムはさほど面倒でもなかった。周辺の各コンピュータからステータス・ブロックが伝えられるように、数十行のコードを書くだけでこと足りる。天文学畑の人間は長年の習慣でフォートランを使っている。それゆえ、今どきそんな古い言語をと、デイヴに目を丸くされても私は何も感じなかった。デイヴは、今はC言語の時代だと言い、たちどころに私のプログラムをすっきり二〇行のコードにまとめてみせた。』

時代だなあ。

『オブジェクト指向プログラムといえば仰々しいが、何のことはない。これはプログラムを書くのに、変数やデータストラクチャはいらないという意味だ。』

私の知っているオブジェクト指向とは違うようだ。

時代が時代なので、コンピュータも牧歌的です。GNU Emacsにそんなセキュリティホールがあったのか。
大学とかのコンピュータだと、ファイアウォールも何もなく、パスワードさえわかればどこからでもログインできる、というのは、私が社会人になってからも結構続きましたが、そんな状態なら、パスワードに辞書に載っている単語を使ってはいかんでしょう。しかし、主人公達は/etc/passwdが盗まれているというのに、平然としている。

『「向こうがスーパーコンピュータを持っているとしたら話は別だ。暗号の解読にはスーパーコンピュータがいる。UNIXはVMSと違って、高度な暗号システムを使っているからな」デイヴも負けじとやり返した。』

スーパーコンピュータなんかなくたって、cryptのアルゴリズムは公開されているのだから、辞書攻撃とかで順番に試していけば、辞書にあるパスワードなら解読できる、というのは、当時は常識ではなかったんでしょうか。/etc/shadowはまだなかった時代だけど、ちょっと考えればわかることのような。

主人公たち、ハッカーを泳がすためとはいえ、自分たちのコンピュータにハッカーが入ってスーパーユーザ権限で好き勝手やってるのを放置しすぎでしょう。何も知らない一般ユーザが普通に使っているコンピュータなのに。いつrm -rfされるかもわからないのに。

ところで、バークレーという場所柄なのかもしれませんが、主人公達が反体制派なのはわかるとしてもさすがに行き過ぎに感じます。CIAに敵意持ちすぎ。主人公友人のローリーに至ってはこんな感じ。
『「だからどうだっていうの? それこそ、追っかける必要はないというりっぱな根拠じゃないの」ローリーは気色ばんだ。「その人、ドイツの緑の党あたりの平和運動家かもしれないわよ。軍がこそこそ怪しげなことをやっているのを探って、大々的にすっぱ抜く気じゃないかしら」 』

そうだとしても侵入はしちゃいかん。
『私もずいぶん変わったものだ。一年前は、高級将校と聞けばウォール街の資本主義者たちに操られて死の踊りを演ずる傀儡戦争屋としか思わなかったろう。学生時代にこり固まった考え方は抜きがたい。しかし、こうしてみると世の中は、白と黒で単純に片づくものではない。私の話に耳を傾けてくれた将軍たちは皆、深刻な問題に正面から取り組む意思をもち、それにたる知性をそなえた人物と見受けられた。』


さて、以下はネタバレです。































ハッカーの正体は、「KGBの依頼を受けたドイツ人」でした。ガチでやばかったんじゃないか。
主人公たちはハッカーを泳がせるために、バークレーのコンピュータどころか軍のコンピュータでも割と好き勝手やらせています。本当の軍事機密が入っているようなコンピュータには侵入されていなかったようですが、そして本当にヤバげな情報が盗まれそうなときは電線を導体で突っついてノイズを入れて失敗させたりとかもしてますが、それにしても好き勝手やらせすぎでしょう。

『それ以上にKGBにとってありがたいことに、ドイツのハッカー集団を通してソヴィエトは集積回路の設計、コンピュータを利用した工業生産等、西側の最先端技術に関するに関する情報を手に入れることができた。』
『ペーター・カールとダーク・ブレジンスキーはこれまでにわかっているかぎり、十数回KGBと接触してソヴィエト側の要求する情報を提供した。UNIXオペレーティング・システムのソース・コード、高速ガリウム砒素集積回路の設計仕様、コンピュータ記憶チップ加工プログラム等である。』

言わんこっちゃない。



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