読むものがなくなるとKindleの本棚から古い本を引っ張り出してきて再読したりします。今回のはそんな感じで再読した本。「人体 失敗の進化史」。
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――なんというか、暑苦しい文体の本です。以下、「あとがき」からの引用。
闘う学者の姿。私はそれを多くの人に見てもらいたいと念じて、筆を執った。「遺体科学」のような地味な学問が、のたうち回り、呻吟する様を、そのまま凝視してほしいのだ。そこには、生みの苦しみを克服しながら、ヒトや動物の身体の謎を解き明かしていく、学者たちの飽くなき熱狂が、必ずや燃え上がっている。人間社会が日々当然のように享受している身体についての知は、けっしてスマートとはいえない遺体と学者たちの混沌が築いてきたものだ。読み手は中学生でも、サラリーマンでも、専業主婦でも、悠々自適のご老人でも構わない。サイエンスとは、つねに現実と闘って勝ち取らなければならないものだという事実を、普通の人々に普通に知ってもらいたいのだ。
ほら暑苦しいでしょう。「左様」なんて言葉いまどき使うかね。
さておき内容について。アメリカあたりのキリスト教徒の信じていることに反して、人類は、というか今地球上にいるすべての生物は、神がデザインしたのではなく突然変異と自然選択により進化してきたものです。進化は少しずつしか起こらないし(一気に大きく変わったら、そんな個体はたいてい死んでしまう)、突然変異は目的をもって起きるものでもありません。なので、たとえば今生きている鳥の羽毛は飛行にものすごく適していますが、初期の中途半端な羽毛は、飛行の役に立たないなら何かの役に立たないといけない。そうでなければそんなものは発達しないからです。羽毛については恐竜の頃は保温の役に立っていたのではないか、というのが今の定説だったと思います。こういうのを前適応と呼びますが、この本には前適応の例がいくつか紹介されています。
- 骨は、当初はリン酸カルシウムの保管場所だった、とか、
- 四肢を持つ動物の先祖である魚、ユーステノプテロンの鰭には骨が入っていて、これは魚の頃はホバリングしたり非常に遅いスピードで細かい移動を繰り返すのに適していた(同種の魚であるシーラカンスの研究でそれがわかった)とか、
- 小さな音を聞くためにヒトはツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨という骨で音を増幅しますが、このうちツチ骨、キヌタ骨は昔はあごの骨だったとか。
進化は行き当たりばったりに進むので、直立2足歩行してみたら『のど、つまり咽頭が重力の方向へ落ち込み、咽頭の周辺領域に空洞が作られたと考えられてきた。この空洞を使うと、筋肉の微妙な動きをもとに空気を震わせ、繊細な声を作り分けることができる。』ようになった、といった良い方向への進化が起きることもあるでしょうが、当然悪いことも起きます。人類の場合、本書によれば、貧血とか、冷え性とかむくみとか、椎間板ヘルニアとか、脱腸とか、肩こりとかが挙げられています。これがタイトルの「人体 失敗の進化史」につながるのでしょう。
その他、こまごまと。
先日紹介したphaさんの「どこでもいいからどこかへ行きたい」に、こんなことが書いてあった。
実際は腕の骨というのは、胴体につながっているのは鎖骨の部分だけなのだ。首の下あたりで肋骨と鎖骨がつながっていて、その鎖骨に肩の骨がつながっている。だから鎖骨が折れると腕を上げることができなくなる。背中にある肩甲骨も肩の骨とつながっているけれど、これは肋骨には接続していなくて筋肉に包まれて浮いているだけだ。
そうなのかー、でも猫なんかは鎖骨がなかったと思うけどどうなってたんだ、とChatGPTに聞いたら、鎖骨がないから腕は筋肉につながった肩甲骨だけにつながっているらしい。ふむふむと思っていたら直後ぐらいに読んだこの本に同じことが書いてあった。
カエルにはへそがない、って小学生の頃からよく聞きましたが、カエルにはへそがなくてもカメにはあるんですね。母親とへその緒でつながっている胎生の生き物以外はへそはないと思ってましたが、爬虫類でも卵黄から栄養をもらうためにへその緒らしきものはついている、と。
人間一生勉強ですねえ。
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