例によって高野秀行さんの本です。「幻獣ムベンベを追え」は高野秀行さんの処女作になります。
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アフリカはコンゴの「テレ湖」という湖に、「ムベンベ」というネス湖のネッシーみたいな怪物が出ると聞いて、それを探しに行く、というノンフィクションです。著者の高野さんは当時(学生時代)早稲田大学探検部というところにいて、探検部の活動として行ったとのこと。
――ぶっちゃけ、「ムベンベ」などいるわけがないので、探索は失敗に終わります。「見つかった」とか「正体は不明だがそれっぽい姿は撮れた」とかだとそれはもう水曜スペシャルなわけで、見つからなかったと正直に書いている本書は正直だと思います。この本、私は高野さんの「アヘン王国潜入記 」を読んですぐKindleでサンプルをダウンロードしたのですが、前述の「ムベンベを探しに行く」という趣旨を読んだ時点で「見つかるわけないだろそんなもん」というのでずっと放置していたのでした。でも、ムベンベ自体は見つからなくても、若者がいろいろな困難を乗り越えて、日本の大使館もないようなコンゴまで行って探検するという時点で、なんというか私のようなおっさんが読んでも燃える要素があります。すごいよなあ。
高野さん達のチームはソナーを持ち込んで水深を計っています。
一方、ボート班の戸部から、本日のソナー調査の結果が報告された。彼はドクターとともにベースキャンプを出発、真南の方向へ進み、湖の中央部から東に左折しサブキャンプに渡ったという。
「深さは平均約一・五m、湖の中央部付近でも二m程度です」
「にめーとる?」 私は絶句した。
まあ、2メートルではネッシーのような怪物はいそうにない。
彼らは「テレ湖」に40日ほど滞在して湖の観察を続けるわけですが、途中で食糧が足りなくなります。これについては、以前紹介した「辺境メシ ヤバそうだから食べてみた」にも記載がありました。極度の飢えの中ゴリラとかチンパンジーを食べたと。で、これを読んだとき不思議でならなかったのは、「なんで食糧ぐらい十分用意しとかなかったのさ」ということ。それについては本書に回答がありました。
湖に行く前の目論見。
メンバー一四人とガイド六人が四十日湖に滞在でき、ポーター三〇人が湖へ二往復(行きと帰り)して、まだ余る。食糧に関しては大丈夫のようであった。
実際に湖で探索を始めて13日目。
「食糧がどうも少ないような気がする」 はじめにそう言ったのは几帳面な向井である。 三日前のことだ。私や戸部といった粗雑な人間は、例によって「些細なことにこだわる向井のたわ言」と聞き流していたが、今日自分で食糧置場を覗いてみると、粗雑な私でもひと目でわかるくらい減っている。慌てて計ってみたところ、何と十三日目にして残りがもう四分の一しかない。われわれはあまりのことに愕然とした。
われわれは村で念入りな食糧計算をし、二〇人が四十日間テレ湖に滞在できるだけの食糧は用意したはずであった。途中、大量のマニオックをポーターたちに奪われたとはいえ、ガイドも三人減ったことであるし、一か月はまず大丈夫であると――ついさっきまで思っていたのだ。何か〝落とし穴〟があったに違いない。われわれは鋭く推理を展開させたが、結局、「初めから食糧が全然足りなかった」という結論に達した。 私はあの出発時の混乱を思い出した。荷物の配分に四苦八苦しているとき、村人がどさどさと麻袋につまった米やら粉やらを山積みにした。「おーやっと来たか」と私は急いでそれを小さい袋に分け、ポーターのかごに配って歩いたのを思い出した。あの〝山積み〟にだまされた。おそらく実は半分以上ちょろまかされていたのだ。
多少出発を遅らせても、きちんと計り、完璧な準備をすべきだった、と今さら言っても仕方ない。われわれはニコニコした村の人たちがそんなことをするとは夢にも思わなかったのだ。
現地人、ろくでもないな。
しかしこの遠征、一人の死者も出なかったのは幸運に見える。せめてマラリアにかかった田村さんだけでもさっさと帰してあげることはできなかったのか。
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