読書記録です。金城一紀さんの小説、「GO」。
アフィリエイトリンクです。
https://amzn.to/4o8HVy1
これを読もうと思ったきっかけは、前回紹介した「異国トーキョー漂流記」を読んでたら、こんな記述があったことです。スーダンからやってきた盲人の留学生マフディ君の言葉。
ときには、説教までされる。
「タカノさん、金城一紀の『GO』、すっごくおもしろかったですよ。あれで差別の感覚が変わったな。タカノさん、読んだ? え、読んでない? ダメだよ、読まなきゃ……」
私もまさか盲目のスーダン人にせっつかれて、在日コリアンの青春小説を読むことになるとは思わなかった。
上にある通り、「GO」は在日コリアンの青春小説です。本書の冒頭にはこんなことが書いてあります。
ここでまず断っておきたいのだけれど、これは僕の恋愛に関する物語だ。その恋愛に、共産主義やら民主主義やら資本主義やら平和主義やら一点豪華主義やら菜食主義やら、とにかく、一切の『主義』は関わってこない。念のため。
でまあ、「主義」は関わってこないけど、「差別」は深く関わってきます。メインのテーマと言っていい。恋愛といわれてもヒロインの桜井は美人だったら何やってもいいのかよ的なキャラだし。ついでに主人公も、暴力的すぎる。差別に対する自衛という面もあるのかもだけど、中二の春に原チャリをパクったなんてのは単なる悪であり、私なんかはどうも感情移入しかねる。
在日朝鮮/韓国人に対する差別について、私は偉そうなことが言えるわけではないですが、Wikipediaを見てみると作者の金城一紀さんは中学校までは民族学校に通っていたが途中で朝鮮籍から韓国籍に変えて高校からは日本の高校に通う、という、本作の主人公と同じ来歴を辿っている。
2000年には、自身の生い立ちが元の半自伝小説『GO』を出版、直木賞を受賞。
とあるのでやっぱり「半自伝小説」で、本書の差別も体験が反映されているのでしょう。
ところで、金城一紀さんは1968年生まれなので、高校に行っていたのは80年代です。では本作の作中年代はその頃なのか、というと、こんな記述がある。
「ベルリンの壁は崩れたし、ソ連ももうないのよ。この前テレビで言ってたけど、ソ連が崩壊したのは寒さが原因らしいわよ。寒さって、人の心を凍らせるのよ。主義も凍らせてしまうのよ……」
ベルリンの壁崩壊は1989年、ソ連の崩壊は1991年。
それよりは後、ということなのでしょうが、それにしちゃ作中誰も携帯電話を使わないし、いまいち時代は不詳ではあります。
この記事へのコメント:
コメントを書く
名前: