K.Maebashi's blog

「月は無慈悲な夜の女王」の世界観


最近、「月は無慈悲な夜の女王」を読んだ。こんな古典的な名作を今まで読んでなかったわけで私は読書家でもSF者でもないわけですが、ストーリーはいいとして気になったのが世界観。

この物語では、主人公は月に住んでいます。月には300万人くらいの人が住んでいますが、その多くは元は囚人、つまり流刑囚として月に追放されたわけです。しかし、物語の時点では、

「われわれの九十五パーセントまでは、自由な身で生まれているか、あるいは刑の期間が終わっているから、理論的にも自由の身だからだ。」

とのことで、つまり刑期が終わった人や、元囚人の子孫がほとんどである、と。

有期刑で月に送るなら、刑期が終わったら地球に戻すべきだと思うし、まして子孫に罪はないんだから月にいさせる理由はないでしょう。もっとも、いったん月に来ると月の重力(地球の1/6)に慣れてしまってそう簡単には地球に戻れなくなるようですが、そんなことなら有期刑の囚人を月に送るべきではないはずです。実質的に無期懲役になるんだから。

どうも、私は、未来になればなるほど倫理観とか人権とかが向上して人は理不尽な目には遭いにくくなるのだろう、と信じているのですが、以前ここでも取り上げた「マーダーボット・ダイアリー」なんかでも恒星間航行ができるほどの未来なのに倫理観が擦り切れていて、こういうのってSF的な世界観としてはよくあるものなのでしょうか。

で、月の人たちは何をしているかというと、農業をして小麦とかを作ってマスドライバーで地球に送っています。月の貴重な水で農業して輸出なんてそんな無茶なと思いますが(そしてそれは物語中でも言及されるのですが)、当時はこれもある程度のリアリティがあったのでしょうか。地球には110億の人が住んでいるので農地が足りないということなのでしょうが、だからって月で農業はもっと無茶だと思う。最近だと「宇宙兄弟」では岩の中にわずかな氷があることを発見して喜んでいたぐらい水は貴重なはずで。まあもっともガンダムでもコロニーには農業ブロックが付随していて農業やってるはずですが、あれは基本はそのコロニーでの自給自足用で、循環しているだけなんじゃないのかなあ。

で、マスドライバーです。月から地球にマスドライバーで農作物とか岩とか(兵器として)を送るのは簡単だが逆に地球から月に送るのは難しい、なぜなら月の重力の方が地球より小さいからだ、ということになっていますが、月は地球の周りを公転しているわけで、公転と逆向きに回って公転速度を殺さないと、月の重力を振り切ったとしても月軌道あたりの地球の衛星になるだけで、地球に落ちてはこないと思う(ですよね?)。

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