K.Maebashi's blog

だいぶ前の読書「死の商人」


ガンダムだと「アナハイム・エレクトロニクス」なんて企業が出てきて、敵味方両方に兵器を売って大儲けしてますが※1、現実にそんな企業はあるのかな、と思ってたらamazonのおすすめ欄に出てきたので購入。
「死の商人」。

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この本、最初の発刊は1951年、つまり終戦からほとんど経っておらず、まだ日本が進駐軍に占領されていたころです。

だが、当時はまだ占領下のことであり、GHQは「事後検閲」という陰湿な言論抑圧の制度を実施していて、筆者や出版社の自己規制を迫っていた。連合国(実際はアメリカ)を誹ぼうする(アメリカ帝国主義の本質や政策を批判する)ような内容の書物を出版すると、下手をすれば、発行後に「占領目的違反」のかどで告発し、軍法会議にかけるぞ、という脅しである。それも筆者だけでなく、出版社にも累を及ぼすというのだから自己規制せざるをえないことになる。初版では、原爆禁止のストックホルム・アピールなど世界の平和運動のことをカットし、また「死の商人」としてのアメリカ独占資本の態様の暴露や明確な表現を避けざるを得なかったのはそのためであった。

その後、1962年に、『初版では書きたくも書けなかった事実や事項を補』った改訂増補版が1962年に出され、1999年に復刻版、2024年にそれが講談社学術文庫に入った、ということのようです。つまり、長いこと読み継がれている本です。私が買ったのは講談社学術文庫の電子書籍版ですが、ウクライナの戦争以降有名になった小泉悠さんが解説を書いている。

最初の私の疑問、『アナハイムエレクトロニクスみたいな両陣営に武器を売る「死の商人」は本当にあったのか?』という疑問についての回答は「あった」ということになると思います。第一次大戦時のヴィッカース、大砲のクルップ、IGファルベン、火薬のデュポン等。敵味方両方に武器を売るくせに、「愛国者」を標榜する。

だが、それにもかかわらず、「死の商人」が「愛国者」としてふるまい、いな、「愛国者」たることを売物にすることは、以上にのべた第一の属性と、けっして矛盾するものではない。「死の商人」は、しばしば、自分の「祖国」が外敵に侵される危険があることを、口をきわめて喧伝する。

本書にはダイナマイトのノーベルも出てきます。

─そのノーベルはこういっている──「私は世界の市民である。私の『祖国』はどこかといえば、私が仕事をするところは、どこでも私の『祖国』だ。そして、私は、どこででも仕事をする」と。いいかえれば、ノーベルにとっては「祖国」はあるが、同時に、「祖国」はないのであった。

 一八九二年に、「ダイナマイト王」アルフレッド・ノーベルは、『武器を捨てよ』の作者ベルタ・フォン・ズットナー女史とチューリッヒ湖畔で会見した。ノーベルは、湖畔にならんだ絹織物業者たちの豪華な別荘を指さしながらいった──「あの別荘はみんな蚕がつくり出したものですね」。平和運動に従事していた貧乏な作家ズットナー女史はこたえた──「ダイナマイト工場は、絹織物工場よりも、もっともうかり、しかも、もっと罪悪でしょうね」。だが、ノーベルは確信をもって語ったのである──「わたくしの(ダイナマイト)工場は、たぶん、あなたがたの運動よりも、ずっと早く戦争を絶滅させるでしょう、というのは、対抗する両軍が一秒間に全滅させられるような爆発物ができたら、文明国民はきっと軍隊を解散するにちがいないから……」。
 だが、ノーベルのダイナマイトより数十、数百万倍も強力な原子爆弾が生れ、さらに、その何百倍もの破壊力をもつ水素爆弾ができても、ノーベルの予想は実現しなかった。

上にも書いた通り、本書の解説を小泉悠さんが書いています。それをもって、本書の本文について、「サヨクの書いたトンデモ本なのでは?」と思う人でも、事実関係については正しそうだと思えるのではないでしょうか。
以下、その「解説」より。

私自身は、適切な規模と運営方法であれば日本が軍需産業を持つことにも武器輸出にも賛成という人間なので、そのように見られることは意外ではない。また、本書の著者である岡倉は、日本を含めた西側諸国が帝国主義的で悪辣な資本主義陣営であるとして強く糾弾する一方、ソ連が世界的な武器輸出大国であることには触れない。出てくるのは西側の武器輸出を非難するソ連側の言説だけであり、現在の目で見るといかにもバランスが悪い、と私からは見える。このような意味で、おそらく私は本書にとってあまりフレンドリーな評者とは言えない(岡倉が存命であれば、果たして私に解説を任せることに同意しただろうか)。

本書の著者の岡倉古志郎さんは2001年に亡くなっていて、小泉悠さんが解説を書いたのはおそらく2024年、なのでその時点で亡くなっていたわけですが、まあ何というか身も蓋もないというか。


  • ※1 時々最新兵器を無償供与とかしているようで本当に儲かってるのか疑問ですが。

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まえばし

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