K.Maebashi's blog

最近の読書「痴人の愛」


そういえば久々ですが読書記録です。
今回はKindleではなくて青空文庫で読みました。谷崎潤一郎「痴人の愛」。

何をきっかけにこれを読もうと思ったのかはすっかり忘れましたが、とにかく少し読み始めて、その後しばらく放置して、いつまでもスマホのブラウザのタブをひとつ占有していたのでその後一気に読み切りました。

読んだのは青空文庫ですが、アフィリエイトリンクを貼っておきます。
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高校あたりの国語の授業でタイトルと作者名くらいは知っているが内容は読んだことない、という人が多いのではないでしょうか。私もそうでした。

内容はと言えば、技師でちょっと小金持ちの物語開始時点で28歳(数え年)の主人公の青年が、カフェの女給をやっていた当時15歳(同じく数え年)のナオミに魅かれて、彼女を引き取って教育を与えて立派なレディにしてやろう、うまくいったら結婚しよう、という話です。まあ今の感覚なら気持ち悪いと思うでしょう。

でまあ、割とすぐに結婚はしたものの、ナオミはぜいたくはするわ他に男は作るわ、主人公は最終的にはついにナオミを追い出しますが、結局は…… というストーリーです。ナオミについた『とても口に出来ないようなヒドイ仇名』って何だろう? ※1

しかしまあ読んでみると、ナオミは性に奔放とかいう以前に性格が悪い。
主人公はナオミを立派なレディにしようとしているので、ダンスに連れて行ったりするのですが、そこで知り合ったあまり美人でない女性について陰でさんざん猿だ猿だと馬鹿にしたうえで、

「ねえ、綺羅子さん、あなたそうお思いにならなかった?」
「まあ、何でございますか、………」
「いいえ、あの方が猿みたいな感じがするでしょ、だからあたし、わざと猿々ッて云ってやったんですよ」
「まあ」
「みんながあんなに笑っているのに、気が付かないなんてよっぽど馬鹿だわ」
綺羅子は半ば呆れたように、半ば蔑むような眼つきでナオミの顔を偸み視ながら、何処までも「まあ」の一点張りでした。

『半ば呆れたように、半ば蔑むような眼つき』
そりゃそうだよなあ。

そのあとの主人公の自問自答。

すると私の記憶の底には、自分が始めてこの女に会った時分、―――あのダイヤモンド・カフエエの頃のナオミの姿がぼんやり浮かんで来るのでした。が、今に比べるとあの時分はずっと好かった。無邪気で、あどけなくて、内気な、陰鬱なところがあって、こんなガサツな、生意気な女とは似ても似つかないものだった。己はあの頃のナオミに惚れたので、それの惰勢が今日まで続いて来たのだけれど、考えて見れば知らない間に、この女は随分たまらないイヤな奴になっているのだ。

Wikipediaによれば、本作は

1924年(大正13年)3月20日から6月14日まで『大阪朝日新聞』に連載し、いったん中断後に雑誌『女性』11月号から翌1925年(大正13年)7月号まで掲載された[4]。

だそうですが、直接的なエロ描写はないにせよまあ大衆向けの小説として新聞連載で人気は出そうです。でも途中から女性向け(?)雑誌に連載が移っている。女性に人気があったんですかね。

ところでこの本を読むと、やたら西洋人を崇拝しているのが目につきます。ナオミは美人であるわけですが、美人というのは『顔だちなども何処か西洋人臭く』ということらしい。時代ですかねえ。


  • ※1本によっては(?)、「恐らく、淫売婦や多淫な女を言う俗語『共同便所』であろう」という脚注がついてるそうです。https://www.mrrhp.com/ja/2014-09-13

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