油断するとたまっていくので今回は3冊いきます。
1冊目。「ゼロからトースターを作ってみた結果」。
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以前ここで取り上げた「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた」で紹介されていたので、昔紙の本で読んでScanSnapでPDF化してあったのを掘り出してきて再読しました。
著者は、文字通り「ゼロから」トースターを作ろうとします。「ゼロから」というのは、トースターに必要な鉄を得るために、鉱山に鉄鉱石を掘りに行く、というレベルで「ゼロから」です。
著者はまず、市販のトースター「アルゴス・バリュー・レンジ」(3ポンド94ペンス、当時のレートで約500円?)を買ってきて解体し、必要な材料の当たりをつけます。プラスチックも金属も実際には何種類も使われているのですが、そのあたりは簡略化して、必要なものは以下。そして少なからずズルをして、これらを手に入れていきます。
(1)鉄
鉱山には行ったけれど自分で掘ったわけではなく、鉱山の人から鉄鉱石を分けてもらっている。製鉄は、溶鉱炉でやったけれどうまくいかず、結局電子レンジでやってる(そのために、母親の電子レンジを1台おしゃかにしている)。
(2)マイカ
絶縁体兼断熱材。いわゆる雲母。鉱山に行って、掘り出して帰ってきている。
(3)プラスチック
原油から精製できるはずもなく、じゃがいもからバイオプラスチックを作ろうとするもそれも失敗、最終的に捨ててあったプラスチック製のバケツを溶かしてる。いくらなんでもこれはズルなのでは……
(4)銅
採掘場の近くにたまっている水を汲んで持って帰って、電気分解で取得。
(5)ニッケル
eBayでカナダの記念硬貨を購入。さすがにこれもいくらなんでもズルなのでは……
これだけ苦労して、あちこちズルもしてできたのが、表紙絵にある「トースター」です。
こんなの(よりもっと洗練されたもの)が500円とかで売られているのだから、現代文明とはすごいものです。
本書では、「文明すごい」より、環境破壊とかの外部不経済のほうに話が行っているのですが、著者が作ったトースターより量産型の「アルゴス・バリュー・レンジ」のほうが1台当たりの環境負荷は低いでしょう絶対。
次。「刑務所しか居場所がない人たち──学校では教えてくれない、障害と犯罪の話」
著者の山本譲司さん(演歌歌手ではない。あっちは山本譲二さん)の著書としては「累犯障害者 」が有名ですが、そちらは未読です。紙の本しかなくKindleで読めないので。「刑務所しか居場所がない人たち」は、「累犯障害者 」を若者向けにリライトした、ということでよいのかな。以下、例によって『』内は引用です。
この本で、「刑務所しか居場所がない」とされている人たちというのは、知的障害者です。受刑者の10人に2人は知的障害者とのこと。冒頭で紹介されている20代後半のAさんは、かつてお母さんと一緒に初詣に行って、
『賽銭箱に1000円入れたお母さんは、彼に言い聞かせ言い聞かせた。 「神様にお金をあずけているんだよ。困ったときに、きっと助けてくれるからね」』
と言われて、その後200円の賽銭泥棒で捕まった。この時は執行猶予が付いたのだけれども、猶予期間中にまた賽銭箱から100円盗んで2年6か月の懲役刑。
『Aさんのような軽度の知的障害者は、人から言われれば、身のまわりのことはできるから、一見、障害がないように見える。だけど、善悪の区別がどこまでついているかはわからない。 二度目の裁判で、彼は裁判長に向かってきっぱりと言ったよ。 「まだ700円、神様に貸している」』
『日本の障害者福祉予算は年間約1兆円。GDP(国内総生産)に占める障害者福祉予算の割合でいえば、スウェーデンの約9分の1、ドイツの約5分の1、イギリスやフランスの約4分の1、そして、社会保障制度が不十分だといわれているアメリカと比べても、2分の1以下になっている。』
それで刑務所が最後のセーフティーネットになってるようじゃ、本末転倒というものです。
次。「ぼくは猟師になった」。
私が読んだのは電子書籍ですが、底本は2008年出版らしい。
知らない世界の話は勉強になります。
この手の話は、マンガ「山賊ダイアリー」もおすすめです。
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