例によって読書記録です。
野崎まどさん著 「タイタン」
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AIが発展して、人間は一切働かなくてよくなった西暦2205年の世界が舞台です。23世紀なのでドラえもんより未来です。
世界は地球上に12台存在する「タイタン」というスーパーコンピュータが面倒を見ているのですが、そのうちの2号機、北海道にある「コイオス」がメンタルを病んでしまい、心理学者である主人公がカウンセリングに引っ張り出される、というストーリーです。こうして書いてみるとふざけたような設定ですが、ふざけた書きっぷりはされていません。
AIが発展して、人間は一切働かなくてよくなった世界というと、ちょっと前に紹介した未来職安もそんな世界ですが、こちらはまだ貨幣制度があって、生活基本金で食べてはいけるけど働くともうちょっといい暮らしができる、という世界でした。「タイタン」の世界はもっと進んでいて、もうお金がありません。モノが欲しくなったら「コレクトモール」に行って勝手に持ってくるなり配送してもらうなりすればいい。家もタイタンが建ててくれます。開拓も(自然を過度に壊さない範囲で)やってくれるからその家も広い。
土地の広さと建築途中の外観を見る限り15~20Rといったところだろうか。単身者にはまあ適度な広さだ。
ひとりで15~20部屋もあるような家に住んだら掃除とか大変なんじゃ、と思うかもしれませんが当然掃除もタイタンがやってくれます。
タイタンは、国連開発計画が作ったことになっています。未来職安の記事を書いたとき『やっぱり、生産手段を資本家が持っているのがおかしい。生産手段を人民の手に!』と書きましたが、国連が作るなら、世界中の人がその成果を享受できるのかもしれません。しかしお役所仕事でコンピュータが作れるのかとも思いますし、計画経済は世界の半分で実験されたうえでうまくいかなかったわけでなあ。
この本では、コイオスのカウンセリングのために、人格を引っ張り出して会話するまでに結構な手間がかかっています。今や我々はしゃべるのだけは一人前のAI(内容は正しいとは限らない)と日々くっちゃべってるわけで、その点でも違和感はなくはない。本書の単行本刊行は2020年4月なので、ChatGPTはまだ世に出てない。主人公はタイタンに音声で指示を出しているけど、会話というよりコマンド入力っぽいし、タイタンはしゃべれないのかな、と思っていたら、そうでもないらしい。
普段我々が生活している中でタイタンとやりとりする際に流れる標準音声。返事や会話のキャッチボールが必要な時に対応してくれる、タイタンに搭載された声色の中の一つだ。
だったらここから直接会話するわけにはいなかったのかなあ。そういうのは「機能」として会話するだけだから、タイタンの「本音」は聞けない、ということなのだと思うけど、アバターみたいな空中投影をひっぱりだしたからってそっちが「本音」とは限るまい。
とまあいろいろ書きましたが、コイオスとカウンセリングを試みる話は割と最初の方で終わって、その後は怒涛の展開に続きます。でもネタバレは書かないのがよいでしょう。
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