雑記帳 0028(2003/5/12〜)


ナン(2003/5/12)

かなり前の話だが、東急ハンズで「ナン」のミックス粉を買ってきた。

ナンと言えばインドのパンである。 高級なカレー屋に行くと出てくるものである。 ジャぱん16号である。無発酵パンなのである。 ちぎろうとすると変な方向につつーっと切れて行ってしまうのである。 そこで、「あれえ ナンだこのパンは。思ったとおりに切れないぞ」 などと大声で言ってしまうと、 「二度とあいつは連れてくるもんか」と言われてしまうのである。 このネタは20年ぐらい前のログインにあったのである。 我ながらよく覚えているものである。

男も料理をする時代、私もいくつか作れる料理はあるわけだが、 決して上手なわけでもレパートリーが広いわけでもない。 一口に「料理が出来る」と言ってもいろいろレベルがあるのである。 下手に「料理? 得意なんですよ」と言ってしまって、 実は作れるのは市販のルーを溶かしたカレーだけ、というのでは情けないのである。 でも、ナンを焼いておけば、 「いやあ、私はナンでも作れますよわはははは」と言えるではないか。

そう思って買ってきたのだが、いかんせん忙しく、 なかなか焼く機会がなかった。 しかし、意を決して、昨日作ってみたのである。 最近、いろんなことが大変にナニな状況になっていて、 この状況で遠くまで遊びに行く度胸が私にあるわけはなく、 とりあえずこんなことで現実逃避をしているのである。 どっちにしろ現実逃避なのである。ごめんなさいごめんなさい。

さて、必要な材料は以下の通り。

ミックス粉280g
全卵1個
牛乳100cc〜120cc
無塩バター10g

ミックス粉さえあれば、あとはコンビニでも揃うぐらいにありふれた材料である。 無塩バターとのことだが、10gやそこらのためにひと箱買ってもしょうがないから、 私は普通のバターを使った。

ミックス粉に卵と牛乳を投入し、こね始める。 最初のうちは、ボソボソになるばかりで、 生地としてまとまるとはどうにも思いがたい。 牛乳が足りないんじゃないか、という気になる。 しかし、 以前読んだ東海林さだおさんのエッセイでうどんの打ち方を説明しているものがあり、 そこには

最初のうちはポロポロと粉がくずれ落ちてまとまらず、 「これは水が足りないナ」という心境に陥る。必ず陥る。

ここで水を足してはならない。

人を信じて作業を続けよう。

と書いてあるのである。 うどんなんぞ打ったことはないが、きっと似たようなものだろうから、 説明書を信じて作業を続けるのである。

しばらくこねていると、なるほど生地がまとまってきた。 まだべとべとと手に付く状態だが、 とりあえず説明書の通りにバターを投入する。 冷蔵庫から出したばかりのバターは固く、とても混ぜられないので、 レンジでちょっと溶かしてみるのである。

しかしこの時、手には生地がべっとりくっついているわけである。 これでは、冷蔵庫からバターを取り出したり、レンジに入れたり出来ない。 洗い流すのはもったいないのである。

ナンということだ。 バターをあらかじめ用意しておけば、手を洗うのは一度で済んだはずなのである。 自らの段取りの悪さに歯噛みしながら手を洗い、バターを投入すると、 バターの力でもって、生地はみごとに手にくっつかなくなった。

この状態で1時間ほど放置する。 無発酵パンなのになぜ放置するのかは知らないが、 説明書にそう書いてあるのである。というか、 私はこの隙にちっとは仕事もしなければいけないのである。

1時間待ったらいよいよ焼くのである。上記の材料で4枚ほど焼けるので、 生地を4分割し、平たく伸ばしてフライパンで焼くのである。 オーブンなんか持ってなくても焼ける、というのがナンの嬉しいところである。

説明書には「めん棒で生地をのばし」と書いてあるが、 麺棒なんぞ持っていないのである。そこで、 まな板にラップをしいて湯呑で伸ばそうと考えた。 ナンというグッドアイディア。 しかし、いざやってみると、 伸ばした生地はその弾力により収縮しようとするわけで、 ラップはそれに引っ張られ、くしゃくしゃになってしまうのである。 しょうがないから、フライパン上空で指でもにょもにょと伸ばし、 そのまま焼くことにする。

ここで問題である。 説明書には「油をひかずにフライパンで焼く」としか書いてないのである。 どれぐらいの火力で、どれぐらい焼けばいいのかさっぱり分からない。 まさか強火では黒コゲになってしまうだろうから、 弱火でとろとろ焼いてみた。

というわけで、ナンとなくナンらしいシロモノがナンとか4枚できたわけである。 本来なら、デジカメで写真でも撮って貼りつけるとよいのだろうが、 あいにくデジカメはどっか行っちゃって見当たらないのである。 ナンは平たいパンだから、スキャナで取り込むことも考えたが、 ガラス面にべったりとくっつくであろう油を掃除するのが嫌だ、 というのもさることながら、今日はもう眠いのでここまでにするのである。

さて、出来あがったナンを食ってみたのだが…

なんかモソモソしてて、正直、単体ではうまいとは言いがたい。 でも、カレーを付けるとそれなりにいける。 このカレーは、市販のルーを溶かした、 でっかいニンジンやジャガイモがごろごろ入ってる日本式のカレーだが、 やはりカレーはカレー、インドの食文化おそるべしなのである。

なにはともあれナンを焼くことは出来た。 これで私は、以後、 「ナンでも作れますよ。あんまりうまくはないけれど」と言えるのである。

少なくとも嘘は言っていないのである。反論は許さないのである。 これにケチを付けるとしたら、それは「ナンくせ」というものなのである。


ひとつ上のページに戻る | ひとつ前の話 | ひとつ後の話 | トップページに戻る