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[713] Re:オブジェクト指向「初」入門
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投稿者:kit
2007/02/20 02:13:25

> 俺がプログラミングを初めてまだ7年、オブジェクト指向が分かっ > てきたのはここ1、2年ほどのことですのでね。 意外と長いんですね。 私はプログラミング歴は24年ぐらい、オブジェクト指向に関しては プログラミング言語C++第1版の和訳や、Smalltalk-80のオレンジブッ クの和訳が出た頃からですから、20年弱くらいですかね。 その前に、先輩から米国byte誌のSmalltalk-80特集号を見せてもらっ たこともありましたが。 > 正方形は長方形のサブクラスであるとしても成り立つ場合は既に > 書きました。is-a と LSP をどうしても両立させられない例を一 > つでも出していただけませんか。 CES さんご自身が、正方形を長方形のサブクラスに『しない』方が いい場合があると、[709]で認めているじゃないですか。常識的に は、正方形 is-a 長方形ですから、当然、正方形は長方形のサブク ラスとして継承関係を結ぶべきですし、Robert C. Martin 氏のエッ セイでも、その方法をまず勧めています。しかし、そうしない方が いい場合もあるわけですから、オブジェクト自身の is-a は必ずし も判断基準に使えません。Robert C. Martin 氏が、エッセイの 「本当の問題」「何が悪いのか?」「Design By Contract」のとこ ろで説明しているのは、そういうことです。オブジェクト自身の is-a で考えるのは誤りであり、オブジェクトの振舞いに関する is-a で考えないといけないのです。前に出た円と楕円の話も同じ です。 このあたりは、和訳を読むよりも、原文 http://www.objectmentor.com/resources/articles/lsp.pdf の "What Went Wrong" のところを読んだ方が、むしろ理解しやす いかもしれません、「a Square object is definitely not a Rectangle object.」と書いてありますから。和訳の「決定的な違 いがあるのです。」という表現では、残念ながら、ここの is-a と is-not-a のニュアンスが消えてしまっています。私は原文の方を 先に読んだので、ここのところが非常に強く印象に残りました。 なぜ、オブジェクト自身の is-a 関係が継承関係の設計に使えない 場合があるのか、そのことを説明しているのが LSP です (ただし、 正方形や円のケースでは、LSP 以外にも、メモリ効率という別の理 由もあります)。継承関係の設計において、オブジェクト自身の is-a 関係は使えない場合がある弱い判断基準なわけですが、LSP は常に使える絶対的な判断基準なわけです。実はLSP(オブジェクト の振舞いに関する is-a) の方が、オブジェクト自身のis-aよりも むしろ本質的な原則なわけです。 現在では、has-a の関係は、継承よりも委譲を使うのが良い解だと されていますが、昔は has-a でも継承を使うことが良くありまし た。今でもたまにそういうプログラムを見ることがあると思います。 これも、アプリケーションを限定すれば、has-a で LSP を満たす 場合があることから来ているわけです。has-a で継承して問題のな いアプリケーションは、オブジェクト自身の is-a 関係で継承して 問題のないアプリケーションよりも、はるかに少ないので廃れてき ているわけですが。 has-a が廃れてきているのに is-a がそうではないのは、オブジェ クト自身についてis-a の関係が成り立つ場合のほとんど(ただし全 てではない)で、同時に、オブジェクトの振舞いに関する is-a 関 係(すなわちLSP)も満たすからです。 > よろしければ、おすすめの本を紹介していただけないでしょうか。 今回紹介したエッセイ自身を含んだ、Robert C. Martin 氏の 「アジャイルソフトウェア開発の奥義」はいかがでしょう? http://hamasyou.com/archives/System/aeeoeeueaconoeoeass.php http://hamasyou.com/archives/System/aeeoeeueaoeeoeaass.php に長めの紹介があります。 ただ、和訳だと上述したように、ニュアンスが失われる部分はある でしょうね。また、data中心でモデリングした結果の扱いについて は、この本の主張に異論がある場合もあるでしょう。この本では常 にOOAを優先すべしという方向ですが、data中心でモデリングした 結果の方を優先した方がいい場合もある筈です。 私は、Robert C. Martin 氏自身の名前は、亡くなられた石井勝さ んのページで知りました。 http://www.objectclub.jp/community/memorial/homepage3.nifty.com/masarl/article/oo-principles.html 石井さんがこのページを書かれたのは1999年ですね。 今ではLSPは有名な原則ですが、これが広まったのは Liskov 氏自 身の功績というよりは、Robert C. Martin 氏の功績の方が大きい と思います。私がこの法則を知ったのも今回のエッセイを読んだ からですし、google で The Liskov Substitution Principle を 検索して最初に出てくるのも、このエッセイですし。

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